新型コロナワクチンの物流では、超低温の温度管理の達成において、「コールドチェーン」が一つのキーワードとして注目されました。一方で、完璧に温度管理を行ったとしても、本来届けるべき地点・人にワクチンが届かなければ意味がありません。貴重なワクチンを盗難やすり替えといった犯罪的行為等から守り、安全に届けるという観点もまた重要です。
今回は、この「顧客にモノ・サービスが到達する最後の接点」であるlast mile(または、ラストワンマイル)の物流管理の重要性に着目し、米国のCISA(Cybersecurity & Infrastructure Security Agency)が発行している文書をご紹介します。
CISAは、米国の国土安全保障省に属する、サイバーセキュリティ・インフラストラクチャ・セキュリティ庁と呼ばれる政府機関です。おもに、情報セキュリティとインフラの安全を監督しています。日本でも、サイバーセキュリティに関する活動が紹介されているため、そちらの動きのほうがよく知られているかと思います。
今回ご紹介する「COVID-19 Vaccine Distribution Security Concerns in the Last Mile(COVID-19ワクチンの物流における最終配送拠点での安全性の懸念)」では、新型コロナワクチン流通の配送拠点における潜在的な安全面の脆弱性と、その対応策が列挙されています。
Last mileの流通段階を「一時保管場所」「現地配送」「調剤拠点」の3段階に分け、各段階において考察したうえで、「医療機関」「政府機関」「商業施設」がどの脆弱性を考慮すべきかを示しています(実際には、どのセクターであってもすべての考慮が必要になると記載されています)。
現地配送における脆弱性の例として、以下のような項目があげられています。
- 駐車場の使用ルールがない、あるいは、ルールがあってもその通りに施行されていないこと(誰でも駐車場に入場できる、駐車できる)
- 車両管理が限定的で、配送車両が積荷の前に検査されないこと、あるいは、通常の配送トラックと混在してしまうこと
- 緊急事態に備えたコミュニケーション計画、あるいは、対応プロセスや手順が決められていないこと
米国の現状を反映した内容ですが、日本でも参考になる項目があります。昨今、医薬品の適正流通基準(GDP)に関する議論も進んでおり、なかでも盗難やすり替えの防止が重要なテーマの一つとなっています。皆様が所属される組織においてリスクの分析・洗い出し等を行う際に、本文書を参考にすることで、新しい気づきが得られるかもしれません。
詳細はリンク先の文書をご確認ください。
※CISAのWebサイトには、他にも新型コロナワクチンの流通における物理的セキュリティを高めるためのポイントを解説したこのようなページ・文書が公開されています。