医薬品や再生医療の流通・物流の文脈で、「Chain of Custody」という用語が出てきます。訴訟や犯罪関連のニュースなどでは「犯罪の証拠」や「証拠保全」と訳されることが多いのですが、医薬品や再生医療の流通・物流においてそのような訳はフィットしません。
医薬品や再生医療での「Chain of Custody」は、調達、製造・加工、流通まで一貫して適切な管理が行われており、その管理が追跡できる状態で連鎖していることを指すと考えられます。森林からの木材調達など、さまざまな分野で「Chain of Custody」は使われていますが、それぞれのニュアンスは微妙に異なっているようです。
そのような問題意識が背景にあるためか、ISOでも「Chain of Custody」の定義を国際的に明確にすべく、専門委員会「ISO/TC 308 Chain of custody」を立ち上げ、「ISO 22095:2020 Chain of custody — General terminology and models」を開発・発行しています。全文の閲覧には文書の購入が必要ですが、ISOのウェブサイトにて、目次や適用範囲、用語の定義を無料で確認できます。
この国際標準によると、あらゆる材料や製品のサプライチェーンに関わる組織が同文書の適用範囲となっています。流通管理の透明性を説明し、信頼を得ることを目的に作られた文書であり、Chain of Custodyは「インプットおよびアウトプットならびに関連情報が、関連するサプライチェーンの各段階を経て移動し、監視および制御されるプロセス」と定義されています。これを物流・輸送に当てはめると、「材料や製品の入荷、出荷、関連する情報がサプライチェーンの各段階を経て移動し、監視および制御されるプロセス」と解釈できるでしょうか。
今後、各分野で、Chain of Custodyの定義についてISO 22095の内容を参照するようになる可能性もありますので、ご参考までにご紹介します。