今回は、米国で法的な拘束力を持つ「医薬品サプライチェーン安全保障法(Drug Supply Chain Security Act:DSCSA)」についてご紹介します。
DSCSAが成立した背景には、2012年に発生した、「New England Compounding Center」製造の配合薬による事故があります。この事故がきっかけとなり、2013年、FDAに配合薬の製造を規制・監視する権限を与える「Drug Quality and Security Act」が成立しました。その第2部に記されているのがDSCSAであり、医薬品の流通における追跡の仕組みを構築するための要件等、医薬品のサプライチェーンに関する品質基準(GDP)に相当する内容になっています。
第2部に記載されている項目は、品質管理、人材、設備、文書化、業務、異常時の対応、業務委託、自己監査、輸送等です。たとえば、販売者および流通に関わる業者には、以下の要件を満たすことが求められています。
- ・所有権移転時に過去の取引情報を提供する。
- ・リコール、あるいは疑わしい製品の調査のために取引文書を提供する。
- ・すべての取引先が認可されていることを確認する。
- ・各パッケージに製品識別子をつける。
- ・疑わしい製品、違法な製品を調査するシステムを導入する。
- ・返品製品は流通前に検証する。
なお、2022年5月10日付けのブログで、米国薬局方(United States Pharmacopeia:USP)が発行している「<1079> GOOD STORAGE AND DISTRIBUTION PRACTICES FOR DRUG PRODUCTS」(GSDP)をご紹介しています。このGSDPも米国のGDPに相当しますが、今回ご紹介したDSCSAとは異なり、法的な拘束力は持っていません。
DSCSAの詳細は、冒頭のリンク先の文書をご確認ください。