今回は、WHOが2023年10月に発行した「感染性物質の輸送規則に関するガイダンス(Guidance on regulations for the Transport of Infectious Substances)2023~2024年版」(以下「更新版」)をご紹介します。なお、2021~2022年版(以下「旧版」)は、2021年6月8日のブログでご紹介しています。
このガイダンスは、ヒト検体やその他生体試料を含む、感染性物質の輸送に関する教本に位置づけられています。輸送物が感染性物質として輸送されるべきものか、また、感染性物質に該当する場合はどのカテゴリーに分類されるかを判断する際の参考になります。
- 「更新版」の構成は「旧版」を踏襲しています。
- Section 1: Transport Regulations(輸送の規制)
- Section 2: Transport Stakeholders(輸送の関係者)
- Section 3: Training(教育訓練)
- Section 4: Defining a Material for Transport(輸送物の種類)
- Section 5: Classification of Infectious Substances(感染性物質の分類)
- Section 6: Preparing Packaging Requirements(包装の要求事項)
- Section 7: Marking & Labelling(表示とラベル)
- Section 8: Documenting Shipments(輸送のための文書)
- 「更新版」では、新たに以下のセクションが追加されました。
- Section 9. Incidents and accidents(異常事象と事故)
- また、「更新版」には以下のような追加事項があります。
- ・輸出入規制・手続きにおいて、関連する現地法および国際輸送規制の要件に従い、必要な許可・認可を全て取得する。最終使用者が正当かつ信頼できることを確認する(Section 1.8、Section 2.5、Section 8.3)。
- ・荷送人と運送業者は、物質移転契約(MTA)や運送契約等で責任範囲を明確にする。MTAでは、物質の説明、移転の目的、知的財産権、責任と補償、守秘義務、準拠法および管轄を規定する(Section 2.5、Section 8.3)。
- ・事故の際は、消防・警察・医療機関へ即時に通報する。併せて、内部向けのインシデント報告や、規制要件に基づく報告を進める。具体的な手順は、国際条約、国内法、組織方針に基づき定める(Section 9.2)。
- ・荷送人は法的要件を遵守し、コンプライアンスチェックを進める。顧客、一般市民、メディアへの事故内容・対応措置の報告を含む情報伝達の管理が必要(Section 9.3)。
なお、「旧版」を踏襲した各Sectionにおいても、内容が更新されている箇所があります。感染性物質の輸送を検討する際は、「更新版」を確認することをおすすめします。