今回は、EUにおける分散型臨床試験/遠隔治験のガイドになり得る「RECOMMENDATION PAPER ON DECENTRALISED ELEMENTS IN CLINICAL TRIALS(臨床試験における分散型要素に関する勧告書)」をご紹介します。
この文書のVersion 01を、欧州委員会(European Commission:EC)の保健衛生・食の安全総局(Directorate-General for Health and Food Safety)が2022年12月13日に発行しています。各国で遠隔治験が導入されつつあるなか、法的拘束力は持たないとしながらも、欧州連合(EU)/欧州経済領域(EEA)における遠隔治験の関連要素について調和した見解を示した文書です。臨床試験での分散型要素の利用促進も目的としています。
- 文書は以下の項目で構成されています。
- 1. INTRODUCTION, SCOPE AND GENERAL CONSIDERATIONS
- 2. CLINICAL TRIAL OVERSIGHT: ROLES AND RESPONSIBILITIES
- 3. INFORMED CONSENT PROCESS
- 4. DELIVERY OF INVESTIGATIONAL MEDICINAL PRODUCTS AND ADMINISTRATION AT HOME
- 5. TRIAL RELATED PROCEDURES AT HOME
- 6. DATA COLLECTION AND MANAGEMENT INCL. DEFINING AND HANDLING SOURCE DATA
- 7. TRIAL MONITORING
- APPENDIX: NATIONAL PROVISIONS OVERVIEW
- 記載されている要件の概略は以下の通りです。
- ・治験依頼者、治験責任医師、追加関係者(オフサイトのサービス等)はその役割・責任を明確に定義し、かつ理解する。
- ・計画段階でIMP(治験薬:Investigational Medicinal Product)の適切な保管条件を検討し、温度管理や出入り制限のような、治験参加者の自宅等における保管の規定を含める。
- ・サービス提供者に業務委託する場合、その根拠および範囲をプロトコール関連文書に詳細に記述する。
APPENDIXでは、各国における遠隔治験関連の規制内容の違いが、Q&A形式で一覧表にまとめられています。例えば、治験医薬品の製造承認を持つ製造業者から臨床試験参加者に治験薬を直接送付することについては、例外はあるにせよ通常ではNoとしています。
冒頭に、「EU/EEAにおけるCOVID-19の流行が終結した時点で本ガイダンスは撤回する」との記載はありますが、今後の恒常的な文書の作成においてもこの文書の概念は継承されるものと考えます。