米国で2023年11月27日に施行された「医薬品サプライチェーン安全保障法(Drug Supply Chain Security Act:DSCSA)」に関する情報を、2022年10月より4回にわたって本ブログでご紹介してきました。いずれも、医薬品流通において追跡を可能にする、情報システムに関する内容です。
そもそも情報システムは、前提として、実際の医薬品の包装に表示される製品識別子(Product Identifier)に対応する必要があります。そのあたりのことに言及した文書が、2023年8月、FDAより産業界向けガイダンスとして追加発行されています。
「Enhanced Drug Distribution Security at the Package Level Under the Drug Supply Chain Security Act Guidance for Industry(医薬品サプライチェーン安全保障法に基づくパッケージレベルでの医薬品流通セキュリティ強化 - 産業界向けガイダンス)」と題する同文書では、包装容器で表示した製品識別子から医薬品そのものがトレース可能であること、とくに2つの行為「Aggregation」と「Inference」の確保を求めています。
文書内には、「Aggregation」は包装容器に割り当てられた一意の識別子間の関係を構築するプロセスを指し、「Inference」は下位レベルの包装とその内容物に関する情報を推論するために、上位レベルの包装の情報を検査または使用することをいうとあります。
文書の意図を含んだ意訳ではありますが、これらは以下のように説明できるかと思います。
Aggregation:種々の包装容器・単位に割り当てた識別子が、データベースに集積されていること。その結果、関連する識別子同士では一意の関係を構築できていること。例えば、親の包装グループと子のグループの製品識別子は、データベースで親子関係が明示されること等。
Inference:状況証拠や理論的思考に基づき、集積した識別子より包装容器・単位の親子関係を調べ、下位レベルの包装で同一の製品かどうかを推論・判断すること。
なお、これらの行為を確保するために、製品の出荷単位(ケースやパレット等)にセキュリティ機能(封緘等が想定されていると思われる)を用いることが推奨されており、製品の改ざん、開封、破損、疑わしい状態が一目で分かる対応が求められています。