今回は、WHO Technical Report Series(TRS)の「Supplement 12:陸路・空路での温度管理した輸送業務<Temperature-controlled transport operations by road and by air>」にある、「2.4項:リスクの特定とコントロール<Identifying and controlling risk>」についてご紹介します。
この項では、輸送業務の特徴としてさまざまな組織・個人間で多くの「接点 <touch-points>」や「受け渡し<hand-offs>」があり、そのプロセスやサービスも多様であることが記されています。また、これら「重要管理点<CCP - critical control points>」での不適切な取り扱い等によるリスク・ハザードを低減させ、許容可能なレベルに保つ必要があるとして、同項では六つの「重要管理点」に対するリスクコントロール手法をまとめています。
- 「荷送人拠点における準備と調整<Product preparation and conditioning at shipper’s location>」
- - 保管施設の温度や湿度のモニタリング
- - 適格性評価(IQ、DQ)に準拠した、工程・時間の規定
- 「製品積み込み<Product loading at shipper’s location>」
- - プロセスの規定、チェックシート、TTSPPの表示
- - 遅延時の対応の規定
- 「陸上輸送<Ground transport from shipper location>」
- - 冷蔵・定温車両 - 積み込み前の設定・調整、温度や湿度のモニタリング、機器の保守確認
- - 遅延時の対応の規定
- 「輸送途中の倉庫保管<Warehousing (en route)>」
- - 保管方法の規定 - 温度や湿度モニタリング、適正温度維持のためのバッテリー・電気接続・ドライアイス、室温管理された場所の利用
- - IATAのチェックリストの使用
- - 遅延・災難の対処法
- 「空港の駐機場<Airport tarmac/apron>」
- - 外気への暴露の最小限化 - 優先順位の高いランプハンドリング、屋根付き保管、受動的保護手段(防寒ブランケット等)
- - 遅延発生時の対処法
- 「航空機の貨物室<Aircraft hold>」
- - 貨物倉の温度を+15.0 ℃~+25.0 ℃に維持、貨物ドア付近への配置を回避
- - 機長に、温度設定やドライアイスの使用を通知
このように、医薬品を保管・輸送するうえで重要なリスクコントロール手法が整理されており、参考になる文書です。
注)
WHO Technical Report Series(TRS)のTRS 961「WHO EXPERT COMMITTEE ON SPECIFICATIONS FOR PHARMACEUTICAL PREPARATIONS」には、「Annex 9:温度管理が必要な医薬品の保管・輸送のガイダンス<Model guidance for the storage and transport of time- and temperature–sensitive pharmaceutical products(TTSPP)>」が付属しています。
さらに、16の「Technical Supplement」文書が発行されており、今回ご紹介した「Supplement 12:陸路・空路での温度管理した輸送業務<Temperature-controlled transport operations by road and by air>」はその一つです。これら文書の全体像は、2022年1月11日のブログおよび2022年1月25日のブログをご参照ください。