国際輸血学会(International Society of Blood Transfusion:ISBT)は、1935年に設立された輸血分野の研究・標準化を推進する学会です。今回は、ISBTが2019年に公開した「血液輸送容器(コンテナ)のバリデーション試験ガイドライン<Blood Transport Container Validation Testing Guidelines>」をご紹介します。
この文書は、血液流通の拠点<blood service distribution points>と医療施設との間で血液成分や血液製剤<blood components and blood products>を輸送する際に使用する、コンテナのバリデーションに関するガイドラインです。採血地点から血液処理センター<blood processing centre>までの輸送は要件がより複雑なため、そして、4℃以下または42℃以上の輸送は極端な気象条件下となるため、対象外となっています。
- 構成としては、「1. Purpose」に続き、「2. Background」で血液成分や血液製剤の保存条件・輸送条件が示されています。その次の「3. Pre-Validation Testing Variables for Consideration(事前バリデーション試験 考慮すべき変動要因)」では、バリデーション試験で留意すべき事項が、以下の通り列挙されています。
- ・コンテナが曝される温度の変動
温度管理した環境では20℃~24℃、非管理環境では4℃、22℃、42℃での試験を実施する。 - ・コンテナの選択
許容重量、保管状態(積み重ね等)、安全性(蓋/開口部の保護)、再使用可能か単回使用か、材料脱落による汚染、環境に配慮した廃棄方法等を留意して選択したもので試験する。 - ・試験で用いる血液製剤または成分
保持温度を血液成分・血液製剤の種類で決定する。試験に用いるのは、期限切れ・廃棄血液製剤が最適。 - ・輸送コンテナに詰める血液成分/製品 - 最大数と最小数
詰み込み最大単位数を確認し、時間と温度範囲を反復テストで記録する。必要な保冷剤パックの割合を掌握する。物理的圧力や最大運搬重量に注意する。 - ・保冷剤パック<coolant packs>
密封ウェットアイスのものを選択する。融点が0℃以下の相変化材料(PCM)は使用しない。 - ・コンテナ内の初期温度
輸送容器・保冷剤パック・梱包材等が試験開始前の24時間以上、必要温度で安定していることを確認する。 - ・包装形態ならびに血液製剤のコンテナへの詰め方
漏れ防止のビニール袋で密閉。外側に不正開封防止テープ。厚紙を使用し、保冷剤パックへの直接接触を防止する。中央の構成要素<component>を保冷剤パックで囲む。 - ・最大所要時間
最遠の目的地に到達するまでの最大所要時間を見積もり、その150%または200%を試験時間とする。3つの温度レベル(冬、夏、室温)を選択し、実験を繰り返す。 - ・コンテナ内の最低温と最高温
ロガー・センサープローブをコンポーネントの表面、ならびに最低温と最高温が見込まれる位置に配置し、記録する。
- さらに、以下のような内容も記載されています。
- 「4. Procedure」……バリデーション試験に使用する装置や部材と留意点
- 「5. Method」……バリデーション試験における実際の操作手順
- 「6. Appendix Example Validation Report Template」……報告書の実例
血液成分や血液製剤の輸送に関する多くの実績に基づいた知見を、国際的なネットワークを持つISBTが集約した内容です。温度管理が必要な細胞・検体・医薬品等の輸送容器のバリデーションにおいても、留意事項のリストとして参考になると考えられます。