過去のブログで、WHO Technical Report Series(TRS)961 Annex 9のなかから、温度管理が必要な医薬品に関する付属文書をいくつか取り上げてきました。
今回は医薬品ではなく、血液や血液製剤の輸送要件が記載されている、2011年発行の「Annex 4 血液取扱施設の製造管理に関するWHOガイドライン<WHO guidelines on good manufacturing practices for blood establishments>」をご紹介します。
このガイドラインには、血液取り扱い施設(医療用の血液および血液製剤の収集、検査、処理、保管、流通を担当する組織または施設)の製造管理に関する要件が網羅的に規定されていますが、9項のManufacturingには「9.9 Storage」「9.10 Distribution」「9.11 Shipping」「9.12 Returns」と保管・輸送に関する内容が記載されています。
- 特に9.9 Storageの項では、「標準作業手順書(SOP)」「温度の管理」「保管場所の管理」について、以下のように細かく規定しています。
- ・ 標準作業手順書(SOP)について
- - 血液・血液成分の受領、取り扱い、保管について記述する。
- ・ 温度の管理について
- - 輸送時を含め、保管条件を維持・管理する仕組みを構築する。
- - 保管区域全体で血液成分が適切な温度で保管されていると証明できるレベルの温度記録をとる。
- - 上限値および下限値で作動するアラームを設置する。
- 条件によってはドアの開閉や製品の取り出しで作動しないように作動を遅らせてもよいが、その影響には留意が必要。
- - アラームが出た場合の措置を決め、製品の使用・不使用の決定権を有する者を定める。
- - 保管機器の適格性を確認する。定期的な洗浄・予防保守を行う。温度計は毎年校正する。
- - 担当者が保管温度の範囲やアラーム設定について理解し、管理できるように研修を実施する。
- ・ 保管場所の管理について
- - 意図する用途のみに利用し、許可された者のみ立ち入り可能とする。
- - 保管血液材料は種類や使用予定で分けて保管する。
- (自家の血液や血液成分等は分けて保管、払い出し待ちは出入口の近くに配置する等。)
- - 障害の発生に備え、復旧時用に温度が適切な代替保管場所の準備を推奨する。
- 主な血液成分の一般的な保存温度についても記載されていますが、規制当局がより厳しい範囲を定めることもあり得るとしています。
- - 赤血球濃縮液:1~6℃
- - 輸血用血漿:-25℃以下
- - 血小板:20~24℃(連続攪拌も行うこと)
さらに9.10 Distributionと9.11 Shippingでは、手順の文書化等が要件として記載されています。
血液取り扱い施設に関する多くの実績・経験に基づいたガイドラインであり、さまざまな分野で参考になると考えます。