今回は、欧州の医薬品審査を管轄する欧州医薬品庁(European Medicines Agency:EMA)が2022年12月に発行した、「治験における分散型要素の推奨文書(RECOMMENDATION PAPER ON DECENTRALISED ELEMENTS IN CLINICAL TRIALS)」をご紹介します。
この文書の目的は、治験薬<IMPs>の臨床試験を臨床試験実施施設<clinical trial site>以外で実施すること、すなわち概念的な分散化<decentralisation>を推進することです。
- 本文書は、分散型臨床試験<decentralised clinical trial>における以下の項目を取り上げています。
- ●スポンサー<sponsor>と治験責任医師<investigator>の役割と責任
- ●電子的インフォームドコンセント<electronic informed consent>
- ●治験薬の配送<delivery>
- ●在宅での治験関連手順<trial related procedures>
- ●データ管理<data management>
- ●モニタリング<monitoring>
- 治験薬の配送に関しては、以下の記述があります。
- ●治験参加者の自宅<trial participant’s home>での治験薬投与を意図する場合、リスクアセスメントを行う。リスクアセスメントには、治験薬配送のロジスティクス<delivery logistics>の堅牢性(特に治験薬が意図しない人に投与されるリスク)等を含む。
- ●物流業者は、資格保有者<authorisation holder>より認可<qualified>を受け、さらに監督<supervised>される必要がある。また、各当事者には、その義務を定めた書面による契約が必要。
- ●治験責任医師は配送においても全体的な<overall>責任を有する。取り決めは、治験実施計画書<clinical trial protocol>または治験薬概要書<Investigational Medicinal Product Dossier>に記載する。なお、治験参加者の自宅<trial participant’s home>までの治験薬配送には、以下の選択枝がある。
- ・治験責任医師<investigator>がいる施設の薬局からの配送
- ・委任された薬局<delegated pharmacy>からの配送
- ・貯蔵所<depot>からの配送
- ●治験参加者の個人データは、関与者のみアクセス可能。治験の目的でのみ利用し、一般データ保護規則<General Data Protection Regulation:GDPR>に従うことを保証する。
分散型臨床試験において、欧州でも輸送の管理が重要なポイントであると認識されていることがわかります。