米国では、COVID-19の感染拡大に伴い、FDAが臨時的に既存の運用や考え方等を変更する内容のガイダンス文書を複数発出しています。それらの文書は、2020年1月20日以降の公衆衛生緊急事態下で有効とされていました。
- FDAは、公衆衛生緊急事態が終了する2023年5月11日より前(2023年3月)に、それらの文書を以下のように分類することとしています。
- ①すぐに廃止するもの
- ②180日間延長させるもの
- ③180日間延長させ、公募する意見やFDAの経験に基づいて改訂するもの
- ※参考:Guidance Documents Related to Coronavirus Disease 2019(COVID-19)
臨時的に発出された文書には、「Conduct of Clinical Trials of Medical Products During the COVID-19 Public Health Emergency - Guidance for Industry, Investigators, and Institutional Review Boards(COVID-19公衆衛生緊急事態における医薬品の臨床試験の実施 - 産業界、治験責任医師、治験審査委員会のためのガイダンス)」(2021年8月公開)という、遠隔治験に関連するものも含まれています。前述の分類の③に該当しており、改訂が前提ではありますが、現時点でも有効な文書と思われます。
この文書中のAPPENDIXのQ&Aに、治験薬の輸送に関する記述が見られます。要約は以下の通りです。
Q:被験者が治験実施医療機関の薬局で調剤した治験薬を受け取り、自宅で自己投与している場合、治験実施計画書を変更することなく治験薬の在宅への輸送・投与(home delivery)に切り替えることはできるか?
A:切り替えは可能。ただし、プロトコールの修正なので、治験薬投与の流れの変更に関する文書化が必要。
前述の通り、この文書は公衆衛生緊急事態の終了後も改訂され、存続されるものです。それを踏まえると、大きな方向性として治験薬を被験者宅に輸送することや、プロトコールの変更による被験者宅輸送への切り替え等は今後も行われていくものと推察されます。