今回は、WHO Technical Report Series(TRS)961 Annex 9のなかから、冷蔵車の適格性評価について書かれた「Supplement 11 Qualification of refrigerated road vehicles」をご紹介します。
この文書は、「時間および温度の影響を受けやすい医薬品(Time and temperature-sensitive pharmaceutical product:TTSPP)」の輸送に使用する冷蔵車に関して、適格性評価<Qualification>の進め方や、標準作業手順書(SOP)作成に必要な情報を提供することを目的としたものです。
- 適格性評価<Qualification>の要求事項に関しては、以下のような要件が提示されています。
- ・温度管理した区画内<compartment>の温度分布が、輸送される製品に指定された範囲内(例:+2.0℃~+8.0℃)で維持されていることを実証すること。
- ・積載領域<pay load area>で、TTSPPを置いてはならないゾーンを定義すること。
- ・冷却装置等の故障時に、指定された温度の範囲(最大値、最小値)を超えるまでの時間を確認すること。また、同様に貨物室のドアの開放時間も確認すること。
- ・試験の結果を文書化すること。
- より詳細な評価の手順(試験方法等)については、以下のようなパートに分けて詳しく説明しています。
- ・関連材料と機器<Associated materials and equipment>
- 温度制御チャンバーの適格性を、実物・期限切れ・ダミー製品を用い、規格適合した電子データロギングモニター(EDLM)に評価する。
- ・構造の第1次のバリデーション<Preliminary construction validation>
- 冷凍装置は、周囲温度+30.0℃で、入り込む熱量の1.75倍の冷却能力を持つ。寒冷地の0℃運転では加熱が必要。断熱性は冷凍輸送の場合、熱伝導率≦0.4W/m2K、チルド輸送の場合は≦0.7W/m2K。最初に、温度制御や断熱性能を手順に従ってチェックする。
- ・現場での出荷試験<Field shipment test>
- 冷蔵車両の温度管理区画内の積み込み製品の温度が規定限度内に維持されることを実証する。
- ・温度プローブの配置<Temperature probe placement>
- 温度逸脱に対して脆弱な場所。複数の引渡し場所がある場合、温度の最も高い所と低い所を含める。
- ・試験手順<Test procedure>
- 積載量(最大および最小)、環境(最も暖かい・寒い)を組み合わせた4つの条件すべてで車両を運転し、確認する。
- ・故障試験<Temperature-control failure test >
- 最小量の積荷で制御システムのスイッチを切り、脆弱な場所に配置したプローブで、許容温度を逸脱するまでの時間を測定する。
- ・文書化<Documentation>
- 使用断熱容器・温度制御ユニットは識別可能にし(モデル、製造番号等)、履歴とともに文書化し、保管する。
- ・車両の不合格<Vehicle qualification failure >
- 修正・推奨事項を含めて文書化し、保管する。
- ・校正<Calibration >
- モニタリング装置は指定の手順・期間で校正し、不合格のものは使用しない。
本文書の付録には、冷蔵車両で温度をモニターする場所の一例も図示されています。ご興味のある方はリンク先の文書をご覧ください。